ある青少年の追想

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 振られた。  恋の終わりなんてあっけないもんだ。とくに、十代の恋なんて。ちょうど十九歳の誕生日。彼女はそれを知ってか知らずか、この俺にお別れを告げたのだ。 「他に好きな人ができた」たったその一言でジ・エンド。人生ってこんな簡単に景色が変わるんだなあと思う。  もちろん、俺は動揺した。はじめは何を言われているのか意味がわからなかったし。昨日まで一緒に帰って、他愛のない会話をしていたんだ。それが一日経ってハイサヨウナラ、って信じられるか。  女々しいとは思ったが、食い下がった。一方的に決めつけてなんだそれは、と。  すると彼女は一瞬めんどくさそうな顔をして……それですべては決した。この女は俺の事なぞなんとも思っていないのだと。  そのあと、建前みたいな理由を言っていたが耳には入ってこなかった。仮にも昨日まで恋人を演じていた人間に対して見せた表情に絶望したから。  彼女に振られ、独り身となった俺は幸か不幸か今日からゴールデンウィークだ。阿呆みたいなタイミング。きっとあいつは新しい男と出かける約束でもしたのだろう。もう彼女に俺は見えていない。それこそ、終わりの日を俺の誕生日にするくらいデリカシーがないくらいに。  さて。  この長期休暇を大学生の俺はどう過ごすべきか。  悲しい話、彼女と過ごす予定でいた俺のプランは真っ白になった。ついでに俺の脳内も真っ白になった。これからどうすべきか? そんなの、俺が聞きたいくらいだったからだ。  俺、大学二年生。これから四連休。運命や如何に。  迷いに迷い、どうすべきか袋小路に陥った結果……
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