ある青少年の追想

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「ああああああああああ!」  奇声を上げながら自転車をこぎまくる、という黒歴史ものの奇行に及んでしまったのだった。  何故そんなことをしたか?  そんなの俺が聞きたい。とにかく、彼女に振られて、そんなこと微塵も予想していなかった俺はどうしたらいいかわからなかった。別に青春ドラマの見過ぎとかではないが、ただむしゃくしゃした。この鬱憤をどう晴らせばいいかわからないから、暴走してしまったんだと思う。自分のことを「思う」というのもどうかと思うが。  俺は自転車をこいだ。バイクは持っていなかったから、自転車。そこで男子高校生か、という突っ込みはやめてほしい。金がなかった。  俺はひたすらに、どこへ行くでもなく、ただ自転車のペダルをこいだ。足を動かした。目的地はなかった。どこかに辿り着いてそこに答えがあれば良かった(あるはずもない)。そうこうして自転車をこぎ続け、我に返ったとき、俺はピンチに陥っていた。 「ここ……どこだ?」  俺、大学二年生。十代最後の年に迷子になってしまったのである。認めたくないが。  冷静になったときには遅かった。辺りを見ると信号もコンビニもない、なんだかよくわからない田舎町に来ていたのだ。信号を適当に曲がり、坂を適当に上り、下った結果がこれだ。果たしてこんなバカなことがあろうか。  正直、何時間ペダルをこいでいたのかもわからない。腕時計を見れば時刻は午後四時。もう夕方だ。足が疲れてこぐのをやめたのが正解だったのが、もう遅いのか。後者の気がしてならない。  どうすれば、いいのか。
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