ある青少年の追想

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「……まず、人間を探さないと……」  来た道を戻ろうと思ったが、無駄なことだった。俺はどこをどうやってここに来たのかをそもそも覚えていないから。  断片的には覚えている。巨大なショッピングモールを通過したようなとか、ある地点から四つ目の信号を左折したとか。  しかしそんな曖昧な記憶をたどって戻れるだろうか? 答えは知れていた。それに今は夕方四時。何時間かかけてここまで来たことを考えると、夜になってしまう。暗くなればただでさえ曖昧な記憶と風景が変わり、シンボルを見落とすことになりかねない。戻るのは危険だ。  俺は自転車とともに田舎町を徘徊することになった。  町というか、村と言うか、そんな景色が広がっている。茜色に染まりつつある空は、一切の障害物なく澄んで見えた。街灯はかろうじて、しかし百メートルおきくらい。  細い電柱にが立っているだけで、どことなく頼りない。道は真ん中に白線が一応引いてあったが、すれ違うには勇気がいる太さだ。道の周りはとにかく田んぼで、田植えがもうすぐ始まるのか巨大な機械が田んぼの真ん中に置いてあった。  とぼとぼと形容するのがふさわしい、俺の歩き方。情けない。しかし不安でいっぱいだった。俺はどこにきてしまったのか。なんでこんなことになったのか。  それは全部彼女に振られたからで、そうだ全部あいつが悪いのだ。あいつが振らなければ。 「っ、ちくしょう」
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