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石ころを蹴り飛ばす。大して飛ばなかった。それがまた俺の苛立ちを助長して……俺は歯噛みした。
希望を取り戻したのは太陽が西に沈み始めた頃だ。
さすがに夜が近づくと俺も焦燥感というものを覚えた。歩く速度を速めていく。
冷静に考えれば、自転車をこいでしまえばよかった。ただ、俺の数時間自転車をこいだ俺の脚は限界で、とぼとぼ歩くしか当時は選択肢が思いつかなかったのだ。
四キロくらい歩いたんじゃないか、と思い始めた頃、遠くから音がしたのだ。文字にするなら「ブロロロロロ……」みたいな。それは、つまり。
「車!」
俺は駈け出していた。音はこちらへ向かってくる。
それは真実だった。ライトをつけたトラクターがこちらへ向かってくる。家へ帰る途中だろうか。というか道をトラクターが平然と走るんだ。
そんなことはどうでもよかった。俺は自転車を投げ出していた。道路の真ん中に仁王立ちする形になっていた。必死に声を出していた。
「すみません! このあたりにお住まいの方でしょうか!」
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