1章 修羅と成っても

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「お前な、 誰のせいで…」 土方さんが苦い顔で溜め息をついた。 「そりゃあ勿論僕のせい…」 「分かってんじゃねぇか。 だったら…」 「…だけじゃないよね、 土方さん?」 僕が微笑むと土方さんはうっと詰まった。 「僕がちょっかいかける前から眉間に皺寄ってたよね」 「…むぅ」 「また仕事で悩んでるの? 今度はどうしたの? 志士達が暴れてる? それとも市中で盗賊被害でも出た?」 「…間諜だ」 重い口を開いて低い声で土方さんの口から苦々しげに吐き出された言葉に僕は知らず剣呑な目付きになる。 「それはどこから…?」 「監察方…山崎からだ」 「ってことは…ほぼ確実だね」 「あぁ…」 暗い表情で頷く土方さん。 あぁもう、 そんな表情(かお)しないでよ。 僕まで悲しくなってる。 そんな顔土方さんにさせていいのは僕だけなのに。
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