目の上のコブ

10/11
前へ
/116ページ
次へ
前々から小林が感づいてることには気づいてた。 彼女を口説いて、俺から奪おうとたくらんでいたことも。 「で、次は朝倉ってわけか?」 くだらなすぎる。 中学生かよ。 こんなクソガキ相手にしてる方が疲れる。 小林は、にんまりと笑いを堪えながら口を開いた。 「俺が本気であいつを好きだったとでも思ってるんですか?」 いや、そうは思わないし、お前の意図はわかる。 「でも、ちょっと今回は、麻衣ちゃん、マジになりそうです」 パッと笑みが消えた小林のその表情は、茶化しているそぶりもなくて思わず息をのんだ。 「お前そんな朝倉にこだわらなくったって、彼女くらいいるだろ?」 「いますよ2、3人」 はぁ? なめてんのか、こいつ。 へいへいと抜かすその言葉に開いた口がふさがらない。 「根拠が違うんですよ」 そう言い切る瞳はやっぱり敵意むき出しで… 「お前、あのこと…まだ…」 「“あのこと”ってなんですか?」 俺の言葉を止めるかのように重ねてくる。 はぁ…。 ったくなんなんだ、この気分は…。 その原因は間違いなくあいつ、小林。 今一番、扱いにくい部下。 苦難というより、ある意味、試練だな…。 やっと小林から解放された俺は、 すぐオフィスを出ると、コンビ二で大量の酒を買って家に帰った。 なんだか今日は… すげー飲みたい気分だ。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3202人が本棚に入れています
本棚に追加