穀雨と、御陵衛士

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啓之助は相変わらずだ…。いや、ちょっと変わったかな?朝の炊事場でも真面目に仕事をするようになったし。 「おせーよっ!啓之助!湯が煮切れちまう」 「何だと!私を誰だと思っている!かの佐久間…」 「俺だって村じゃ宮本武蔵の生まれ変わりと言われた市村辰之助の弟、鉄之助だい!飯炊きしたくて新撰組に入ったんじゃねえや!」 「そこいらの田舎剣士と一緒にするなあ!佐久間家は…」 「家名がどうとか、んな話どうでもいいよ。早朝番の隊が帰って来て、飯ができてなかったら全員殺されるぞ」 「………!」 「………!」 オレはまな板の前の啓之助と鍋番の鉄之助の間に立って、啓之助が残した根菜類の山をざくざく刻んで鍋に放り入れた。 「さすが颯さん、手際いいっすね。今すぐ店開けますよ」 …鉄よ、感心してないでお前ももう少し色々覚えろ。 啓之助はちょっとだけオレの言うことを聞いてくれるようになった。 多少の罪悪感と、ふだん人畜無害なヤツがブチキレたトラウマのせいだろう…鉄之助の言うとおり「ガツンとやってやった」から、というより、「お触り禁止」認定されてる系だ。目も合わせようとしないもの。…それを言うなら、啓之助だって相当なもんだけど。
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