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学校と家と自分の趣味(見事にインドア)の往復で漫然と暮らしてた頃に比べると、天候や屯所の周囲の自然の移り変わりにもずいぶん気づくようになったと思う。
ふと見上げると、裏庭の桜の木の枝先が、夜明け前の薄明かりの中でぼんやり赤く煙っていた。
ーーほれ颯一郎、桜の花芽が膨らみ始めとる。ーー
春休みに遊びに行っても雪の中。そんな会津のじいちゃんが、木々の枝を見上げ春を待ってた気持ちが今ならわかる。
もっともその時は、……ポカソ……
(まだめっちゃ寒いじゃん!木ぃ枯れてんじゃん!)って感じだったんだけど。
人間がまだ縮こまって寒い冬に耐えているような時期も、植物たちは…生き物達はかすかな春の気配を察知して固い冬芽をほころばせたり、命の花を咲かせる準備をちゃんとしている。
冬枝がほんのりとまとう、しかし鮮やかな命の色彩が、今は俺にもちゃんと見える、見えるよ、じいちゃん!
なんつって(笑)
素振りとストレッチ(故障防止のために新に教わったんだが、バカにしてあんまやる人はいない…ううむ)を終えて一つ伸びをする。
幼年組の当番の奴らが水汲みを終えて火を起こし始めた。
…そろそろ新が顔出してもいい頃なんだけど。さっき、沖田ゾーン(勝手に命名)に向かうの見かけたし…。
と、久々に珍しい人が姿を現した。
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