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「永倉の心配ももっともだが、ここであれこれ考えて気を揉んでもきりがあるまい。明日と言わず、例え今夜賊軍が攻め寄せて来ようとも我々は日頃の鍛錬を信じて厳然と事に当たるのみだ。それこそが忠義である」
と、土方さんが締めくくって、近藤さんが発破を掛ける。
「土方の言う通りだ。ともあれ時節柄、騒動の種に事欠かんのは確かだ。全隊、気を引き締めてかかれ」
「承知ィ!!!」
ともかく、いつもの予定調和的なノリでこの日の会合はひとまず終わったのだった。
「…ほんま、いつになったら落ち着くんやろね」
おゆきさんがポロリ、と呟いて台所に入って行った。
オレも同感。先の事は先の事として、今日一日くらい無事に終わって欲しい。と、
「うわあああっ!!」
背後から不意に体当たりを食らわされて、オレと市村鉄は豆の入った大鍋ごとひっくり返った。
「アチチチチっ!!!」
灼熱の鉄鍋アタックは何とか免れたものの、宙に飛び散った豆が火弾みたいに降ってくる。
「佐久間の野郎!!何考えてるんだ!ぶっ殺す!!」
体当たりの犯人は啓之助だった。故意ではないにしても、一歩間違えたらかなりの大事故だ。市村鉄がついに癇癪玉を爆発させて走り去る啓之助の背中を猛然と追いかけた。
「鉄っ、待て!殺すな!捕まえて豆拾わせて!!」
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