道化師の思惑

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ボールを投げ捨て、直ぐに声の方へ走る。 後ろから数人の足音もする。 チームメンバーも全員向かってるということ。 その中に孝太郎の声も聞こえる気がする。 そして、外に出て一歩目で急停止。 体育館の直ぐ横の階段の下、血塗れで倒れた彼女を目にする。 階段の上には広岡が真っ青な顔で立っていた。 「お前…何したんだ!!降りてこい!!」 「わ……私は……!」 「颯汰!ICD!…多分壊れてる!病院!」 「…分かった。とりあえず止血してからだ。」 「颯汰!颯汰!」 「シーーー。大丈夫。落ち着いて。」 …落ち着け…落ち着け! …今、発作が起きなければ大丈夫! 一番焦っているのは自分。 何度も自分に言い聞かせ、深呼吸を繰り返す。 チームドクターを呼んで傷を診てもらう。 後頭部に裂傷。 膝や肘に擦り傷が複数。 そして、左肩に滲む赤いシミ。 「広岡さん!何があったの!正直に言って!」 「…バランス崩して…落ちたのよ!」 「バランス?…勇ちゃんのバランス感覚は、ここにいる連中以上だぞ!嘘つくな!!」 「……!!」 「正直に言え!!」 滅多に声を張り上げない孝太郎が怒鳴り声を上げた。 黙って聞いてると、ちょっとした口論となって武来を突き飛ばした。 武来はバランスを保ったが、勢い余って頭を壁に打ち付けた。 そしてそのまま階段を転げ落ちた。 そんな話だった。
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