道化師の思惑

23/36
前へ
/416ページ
次へ
「安藤さん!こいつ、ICD付いてるんです!」 「そりゃいかん。早く病院に連れていこう。行き付けは?」 「○○大附属病院!」 「そこに連絡して、新しいICDの手配をしてもらって。」 「はい!他は?」 「他は大丈夫だ。勇ちゃん、ちょっと肩見せてね。」 相当な衝撃だったのか、皮膚が裂け、一部のICDが剥き出しになった状態。 目を覆いたくなる衝動に駆られる。 手を握りながら電話を掛け、新しく手配を頼み、入院の予約も入れる。 「…颯汰…颯汰……」 「大丈夫だ。直ぐに病院に行こう。俺が連れていくから。大丈夫だよ。な?」 「うん。…大丈夫…」 「そうだ。その意気。」 チームメンバーも心配そうに武来を見る。 孝太郎は怒りに震え、今にも泣きそうだが、それどころじゃない。 後で泣かしてやるから。今は耐えてくれ。 そう心で詫びていたときだった。 「……そ……た……」 「!!……勇?……勇!!!!」 微かに聞こえた声を最後に目を閉じた。 頬を強く叩いても反応しない。 直ぐに胸に耳を当てながら首に指を当てる。 心音もなければ脈も触れない。 …発作が起きた。 …最悪事態。 なにも、こんなときに起きなくてもいいのに。 運命を呪った。
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3608人が本棚に入れています
本棚に追加