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ここで、武来の風は吹かない。
暴風のように吹き荒れていた風がやんだ。
「…お前さ、今日どうすんの?」
「…みんなが囃し立ててるからな。」
「うわ。やる気マンマン?」
「可哀想。俺。一人ぼっち。」
「バカ言え。それくらい賭けてんだよ。」
「プレッシャー。やめろ。」
今日勝てば、西側の優勝が決まりプレーオフ進出が決定する大事な試合。
集中力を高めるも、心の中にいるのはただ一人。
「…今ごろ勇は何してるかな。」
「…空をプカプカ浮いてるんじゃねぇ?」
「そう思う?」
「それか、直ぐ近くにいる。」
「…やべ。緊張してきた。」
「今ごろかよ!!」
時折思い出すあの笑顔。
共に過ごした思い出。
そのすべてを糧に突っ走ってきた。
"生きていて"
"死なないで"
何度も繰り返した思い。
それは今でも脳裏に刻まれている。
あの日、広岡は事情聴取された。
救急車が呼ばれたのだから無理もない。
だが、直ぐに釈放となった。
あの日以来、一度も口を利かずにISNを辞めアメリカに飛んだ。
釈放となっても、俺は広岡を許すことは出来なかったから。
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