道化師の思惑

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武士のように勇ましい 武来は何度、こんな経験をしただろう? その度に勇ましく勝ち進んでもぎ取ってる命 「…颯汰……ゴメン……颯汰…」 孝太郎に支えられて立ち上がり、再度武来の頬を包む。 「…良かった…勇…良かった!」 「…怖かったね……ゴメン……」 「大丈夫。何度だって助けてやる。」 「……颯汰……」 「だから傍にいて。俺から離れるな。」 「……………」 「…大好きだよ。…愛してる。」 生まれて初めて"愛してる"なんて言った。 そう思える相手がいる俺は幸せ者。 長い時間の心停止。不安が頭を過った。 でも、病院での精密検査では、脳波に異常はなかった。 これもまた奇跡。 直ぐに新しいICDが装着され、10日後、無事に退院した。 「広岡さんを訴える気はないよ。」 警察が事情聴取に来たとき、ハッキリと言い切った武来。 納得できなかったが、それは彼女の意思。 「"口論"の内容、颯汰のこと。…ただ、どっちも颯汰が好きだって話。必死になったって話。二人とも同じ気持ちってだけで訴えるのは可笑しいでしょ?」 …死ぬ寸前まで追い込まれたヤツの言う台詞じゃない。 でも、それが武来。 相手には誠実に接する。 そこにも惚れた。
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