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「普通は、早まるのはやめろとか言うよ」
クスクスと、服田は笑う。青は胸の辺りがむず痒くなった。フェンスの向こうには、広いグラウンドが広がっている。
こんなに見晴らしがいいのに、何だか殺風景だと青は思った。
「だってお前、死のうと思った訳じゃないだろ」
青は反論した。むっとして、服田の顔を見つめた。
「確かにそうだけど。何で分かったの?」
服田はまだにやついている。
「何でって……何となくだよ」
「へえ。僕のことが分かるなんて凄いね、君」
「凄くねえよ。お前だって人間だろ。同じ人間なら大抵のことは分かる」
「僕のこと知ってるの?」
服田はきょとんとした顔で、フェンス越しに青を見た。また風が吹いた。
青は一重の涼しげな目元に、苛立ちを孕ませる。
「知ってるも何も、お前俺と同じクラスだろ」
「あ、そうか。いやでも、僕存在感ないからね」
当たり前のように言う服田が、青はやはり気に食わなかった。
「お前それでいいの?」
「何が?」
「だから、ハブられてていいのかって訊いてんだよ」
「別にいいけど」
「何でだよ」
「何でって。じゃあ逆に訊くけど、何で友達を作らなきゃいけないの?」
青は押し黙った。服田はにやりと笑う。ピンク色の薄い唇が吊り上がった。
「ほら、答えられない。別にいいんだよ、友達なんか作らなくたって」
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