第1章

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(カシス) 私の尖らせた唇は小鳥のように貴女を啄めな い。 左右にぐらぐら揺れて「さよならさよなら」 繰り返すレコーダー 誰の手の平も私を暖められない 私の小さな手を包んでくれる人もいない 今日はこれでいいよ だからお休み安心していればいい 可愛い魚の溺れる小さなアブクの音で 君をゆっくり夢に引っ張ってくれるさ 私の冷たい指先は枯れ始めた花を救えない。 左脳右脳をぶんぶん振って「足りない足りな い」叫ぶアンテナ 苦痛を齎すその温度も 夢から還ってくればまるで桃源郷 もう誰も 二度と 私を笑わせられないという 明日はいなくていいよ もうお休み安心して眠ればいい 切ないウサギの耳が契れる音で 君をゆっくり引き裂いてくれるさ 私がピョンと跳ねた時に反対の世界は42キ ロ分沈んだかしら 大きな地震の時は何百万人の人が向こうで跳 ねたのかしら 私の不安を飲み込むように ベットに誘って頭を撫でてくれるのね。
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