計算する知性

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 僕はぶつくさと独り言を言いながら、倒れた少年に近寄った。間違いなく少年は闇屋の一人だった。その証拠に撃たれた背中からは、血の一滴も滴り落ちていない。  闇屋……それが何者なのかは僕には分からない。「闇屋殺し」はアナザー・ライフプランニングという会社から請け負った仕事。それしか僕は知らない。それ以上の情報は知らされていないし、今のところ知る必要もないように思う。 僕には若干二十二歳にして守るべき妻と娘がいて、彼女らを養うためには会社に命じられるがまま、ただがむしゃらに働くしかないのだ。  案の定校庭の方から「なんか音が聞こえたよね?」「裏のほうじゃない?」という子供たちの声が聞こえてきた。ぐったりと地面に横たわる少年の体を一度眺めた後で、素早く少年の首にサバイバルナイフを一突き入れた。とどめのつもりだ。やはり血は流れないけれど、恐らく闇屋の少年は絶命したと思う。少年の腕を取って脈拍を図ると、反応はない。  そのことを確認してから、素早くサバイバルナイフを鞘に納め、拳銃と一緒にリュックサックの中に放り込んだ。そして校舎とは反対側の、雑草に覆われたフェンスをよじ登った。子供たちの声が近づいて来る。その前に早く。 僕はマスクをしているとはいえ、背格好だけはかなりネットで出回っているのだ。  いわく『連続猟奇殺人犯か!? 身長170センチ位で小太りの男』。  小太りは余計だ。 僕だって気にしているんだけど、根が怠け者なのでどうしたって痩せられないんだ。でもそんな残念な性根なのに、こんなに骨の折れる仕事をもう三年近くも続けられる僕って、意外とすごくないだろうか。  と、少し自分を盛ってみる。  いや、誰だってできるんだ、多分。自分の愛する人を守るためならば、闇屋の子供を殺すことくらい。簡単に。ソースは僕。  雑草に覆われたフェンスを乗り越えて、反対側の道路へ出たところで、ちょうど子供たちの姿がちらほらと校舎のほうから現れた。無論僕は一般の子供たちには絶対に手を出さない。闇屋かどうかは、アナザー社から渡されたスマホのアプリが知らせてくれる。かなり正確な情報なので、重宝している。今までに闇屋以外の人間を傷つけたことは、一度もない。  一般の子供たちに見つからないよう、急ぎ足でその場を立ち去った。    
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