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冷たく言い放つと「お兄ちゃんのばかぁー」という声を背中で聞きながら俺は目的の場所に向かって歩き出した。
「よっ!やっぱ来るんだな!王様みにいかないのか??」
「俺が王嫌いなの知っててよく言うよ」
ははっと笑っているこいつは木村真。俺の親友だ。
「なぁ?、愛ちゃんいないのか?」
「愛は受験生だ」
目的地。まぁただの私立図書館だが。休みの日になると俺はいつもここに来る。
「翔もさ、いくら家にいたくないからって愛ちゃんに冷たくあたるのはどうかと思うぞ?」
家に親はいない。愛は母親の連れ子だ。俺が小さいころに俺の母親は死んだと聞かされている。今の母親も3年前に死んでいる。仕事で海外にいることが多かったので死んだと聞かされてもあまり悲しさもなかった。だが、愛にとっては唯一の肉親。母親が死んでからは愛はしばらく放心状態だった。今こそ何もないように振る舞っているが父親が通夜にも葬式にも来なかったことにはさすがに堪えたらしい。父親は今何をしているのかもどこにいるのかも分からない。俺も愛も父親には会ったことがない。
「血つながってなくても普通にできるやろ?」
「なんか違うんだよ。愛は父親を嫌ってる。その父親と血がつながってるのは俺だ。」
家にいると愛が俺に気を使っているようで落ち着かない。
図書館で勉強を始める。真はただ俺にちょっかいをかけに来ただけだから特に何をすることもせず携帯をいじっている。
「愛ちゃんってかわいいよなぁ?走るたびにツインテールが揺れてさぁ?お兄ちゃんってあの声で言うとかまじ神!!いつ紹介してくれるんだよ!?」
「愛はお前のこと知ってるだろ?」
「知ってるとかじゃなくてちゃんと紹介してほしいんだよ!あんなかわいい子いないぞ?俺んちはうるさいのしかいねぇーし」
気配を感じ顔を上げると真の後ろに一人の子が立っていた。あっと思ったときにはもう遅く真は頭を押さえうずくまっていた。
「真!!どこいるかと思ったらこんなとこに!!家帰ってさっさと勉強!本当に留年するよ!?」
真を後ろから殴ったのは真の双子の妹の杏だ。
「殴ることはないでしょ」
あきれてものいうと杏は怪訝な顔で俺のほうを向いた。
「これは殴ったんじゃないよ。叩いたってゆーの」
叩いたレベルの勢いではなかったが・・・
「杏?いいだろ別に・・・」
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