百合子

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僕には近所でよく遊ぶ幼なじみがいた。 女の子の名前は、百合子ちゃんと言った。 公園の砂場でお城を作って遊んだり、おままごともした。 あとから親に聞いた話では、僕も百合子ちゃんも将来は結婚すると宣言していたらしい。 それが強制的に破棄させられたのは、小学生に上がる少し前だった。 幼稚園が終わり、いつものように僕ら二人は公園で遊んでいた。 この日は、二人が初めてケンカした日だった。 ケンカの内容は些細なことだ。 百合子ちゃんが「お風呂とごはん、どっちにする?」と聞いてきたので僕は、「ごはん」と答えた。 「そこは、百合子ちゃんでしょ!」なんて言うから、僕も意地になって「ごはんを食べないと死んじゃうじゃないか」などと言い返していた。 今、思うと子供らしいバカみたいな言い合いだったなと思う。 しばらく言い合いをして百合子ちゃんは「もう帰る!」と言いだした。 僕が何も言わないでいると「どうして止めないの!」と言った。 僕は腹が立っていたので百合子ちゃんが帰るのを止めなかった。 「本当に止めないの?もう知らない!」と怒り帰って行った。 百合子ちゃんが公園からいなくなってすぐに車のブレーキ音が聞こえた。
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