百合子

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ふと、横を見ると血まみれになった少女、百合子の顔があった。 眼球は上向き、僕を見つめている。 「なぜ、止めてくれなかったの」 彼女は、そう言った。 百合の年齢は、29歳。僕が35歳。 百合子が死んだのは、6歳のとき。 百合が生まれたのは、百合子が死んでからちょうど、6年後。 百合は百合子の生まれ変わりだったかもしれない。 百合子は僕と結婚したがっていた。 生まれ変わってでも僕と結婚したかったのか。 「お風呂、ごはん、どっちにする?」 「百合子」 僕は、迷わずそう言った。 (終わり)
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