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その言葉を聞きみんなの顔がより一層曇る。「失礼します」と言って出ていった和の瞳には涙が浮かんでいた。
「あ・・・愛はどこに?」
「あなたの友達の二人と一緒の所に」
それを聞きほっとする。愛は助かった。だったら龍だって・・・!!
「お兄ちゃん!!」
そう叫んで俺に抱き着いてきたのは愛だ。みんなの計らいで俺は愛に会いに来ている。もちろん杏と真にも。龍のことばかり気にせず息抜きをしろということらしい。
「翔!」
「翔君!」
真と杏も俺に気付き駆け寄る。
「ずっと心配してたんだよ!」
愛が涙ながらに言う。俺より危険な目に合ってたのは愛だろうに。
「愛こそ大丈夫だったのか?なんか薬打たれてたけど・・・」
「ただの睡眠剤だって。私を連れてきてくれた人が言ってたよ」
光のことだろう。睡眠剤ってことは何もされてないか・・・
「翔君こそ大丈夫なの!?なんにもケガしてない?!?」
「俺は大丈夫だよ」
「俺は・・・?」
龍のことを思い出し黙る。杏も察してくれたのかそれ以上は聞かなかった。そのあとは連れられて真たちが住んでいる家に行く。
「こんなところで住んでたんだ」
「けっこう住みやすいよ」
この日は1日この家で過ごした。だが真は俺と口をきくことはなかった。
「真はなんか怒ってるのか?」
俺が聞くと杏は気まずそうに視線を逸らした。
「ここに来てからあんな感じなの。どうしたのかはなんにも言ってくれないけど。なんかいろいろと思うとこがあるんだろうから」
杏の口調からして前にもこんなことがあったようだ。だったら杏に任せておこう。
次の日もその次の日も誰も来なかった。もう地下帝国に俺は必要ないのかもしれない。それとももとから部外者の俺をみんなは好いてなかったのかもしれない。俺は待つことしかできない。
あの日から1週間。俺は屋根に上り朝日を眺めていた。あの日の朝龍もこんな風にしていた。
裕也。そいつに何かあるんだろうか。裕也は卓也とも言っていた。何か関係があるのか?
「翔」
その声にはっとする。下を見下ろすと光が立っていた。
「光!何かあったのか!?」
「何かあったとは?」
「だって休みは1日のはずだったから・・・」
「マスターの配慮。いきなりこんなことに巻き込んでしまったから頭を整理する時間くらい必要だって。地下帝国に来てもらう。翔の意見が聞きたい」
「待って!!!」
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