第1章

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龍はなにも変わってなかった。俺は呆然と立ち尽くした。ほかの人は龍の傍に駆け寄っている。その声に我に返る。 「りゅ、龍!傷の具合は大丈夫!?」 「大丈夫、大丈夫?」 そう言って手のひらをひらひらとさせる。 「大丈夫じゃありませんよ!!」 和が隣から叫ぶ。 「こうやって回復したのも奇跡です。でもまだ治療中でいつまた倒れるかもわからないんです!普通に歩くのは10分が限界です」 10分・・・ 「じゃあ椅子に座ってたほうがいいんじゃないか?」 俺の声に龍はにこっと笑い和を押しのけ一人でマスターの前まで行く。マスターの前にたどり着くとひざまずいた。 「マスター。申し訳ありません。こんなケガ・・・すぐに直しますので「いい」」 龍の言葉をマスターはさえぎる。みんなの間に緊張が走る。するとマスターは龍のほうを向いていった。 「お前は最近働きづめだ。その傷も時間をかけてゆっくりと治せばいい。傷が完治するまでは完全休養しろ」 マスターは部屋のドアへと歩くが途中で足を止める。 「約束に縛られなくてももういいんじゃないか?」 マスターはつぶやく。その意味は龍以外には誰にも分らなかった。 「マスター・・・」 龍は立ち上がろうとしたが急に力が抜けた用に倒れこんだ。 「龍!」 俺たちより先に和は龍の傍に行く。 「誰か龍さんを救護室に運ぶの手伝ってください!」 「私が連れていく」 そして一瞬のうちに3人は大広間から消えていた。 ?龍 Side? 嗅ぎ慣れないにおいがする。小さいころから苦手なにおい。ここはたぶん・・・ 「・・・うっ・・・!」 体を動かそうとすると激痛が走る。 「龍・・・さん?」 声のしたほうを見ると和がいた。 「和・・・?」 声を出しただけでも体が悲鳴を上げる。 「よ、よかった・・・りゅ、龍さん、このまま・・・死んじゃうんじゃ、ない、かって・・・!!」 和が泣いている。今まで泣いている姿なんて見たことなかったからその姿を見た瞬間‘やってしまった‘と思った。 「泣くほど、僕、のこと、好きだった、んだ・・・でも、僕、そういう趣味ないから・・・」 口を動かすと体は痛かったけど和が笑ってくれるのならこんな痛みたいしたことなかった。 「バカですか!!僕だってそんな趣味・・・ありませんよっ!!」 顔は笑ってるけど、涙は止まらなかった。 「泣くなよ・・・」 「泣いてません!!」
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