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目が覚めると鳥のさえずりが聞こえた。カーテンを開けるといつものように朝日が眩しく光っている。
「お兄ちゃん起きてる?」
愛が俺の部屋をノックし入ってくる。
「よかった。明日の約束覚えてるよね?」
「あぁ。ちゃんと覚えてるよ」
「ようやくお父さんに会えるんだよ?嬉しくないの?」
愛は笑顔でそう言った。自分の母親の死に目にも来ない父親に会いたいものだろうか・・・
そう思ったが愛は俺に気を使っているんだろう。愛とは血はつながっていないが俺とは血の繋がっている父親。
俺の前では父親を本当の自分の父親のように笑顔で話していた。
「ご飯できてるから早く来てよ」
黙っていると愛は後ろを向きそう言った。
「あ、愛」
俺は愛に手を伸ばした。
だがその手は愛に触れることなく行き場をなくした。
「っ!!!」
目覚めたのは鳥の声も朝日もない真っ暗な部屋。
全てが始まったあの日の前日。愛と約束をした。父親に会いに行く約束を。
「はぁ・・・」
重たい体をベットから起こす。約束を果たせなかったことは申し訳ないが心の中では安堵している。
父親になど会いたくなかった。
「翔君?起きてる?」
そう言いながら入ってきたのはメイだ。
「ノックぐらいしろよ」
「え?あ!ごめん!!」
メイはそう言いながらも部屋の中に足を踏みいれる。
「で、何か俺に用でもあった?」
「大広間に来てって光が!」
メイはニコニコしながら言った。
大広間に行くと光が窓の外を眺めていた。
「光・・・?」
俺が光を呼ぶと光はゆっくりとこちらを向いた。
そして光は俺の傍に近寄って手を取った。
「え?」
いきなりの出来事で声が裏返る。そんな間にも俺が立っているところは大広間ではなくなっていた。
「ここ・・・」
ここには一度来たことがある。目の前には見知った家が建っている。
「お兄ちゃん!」
見慣れた声がした。今日見た夢と同じ声。同じ顔。俺の目の前に立った。
俺は動揺を隠せず光を見た。
?光 Side?
彼を見て咄嗟に手を取ってしまった。前まで触れることが能力の発動条件だと思っていたから。でも・・・
「温かい手だった。まるで・・・」
昔のことを思い出してしまう。
彼はまだあの事件のことも‘彼‘のこともしらなのだろうけど。
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