第1章

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裕也は涼しい顔して僕に片手を差し出す。その手を取り立ち上がる。 「後でみんなで龍の部屋行くから」 「・・・あぁ」 いよいよ。能力も完璧に使いこなせる。戦闘経験も積んだ。みんな強い。地は固まった。 明日、裕也の兄を助けに行く。 夜。部屋に行くとすでにメンバーはそろっていた。 裕也、岬、要、光、メイ、ユリア。 「龍おそいよお?」 笑顔でそういう裕也の前を通り椅子に腰を下ろした。 「とりあえず、みんな協力ありがとう」 裕也は深く頭を下げる。 「でも、王室に行ったら帰ってこれるって確証はない。降りるなら今のうちに「ゆーや!」」 「私たちが揃ってれば大丈夫!裕也のお兄ちゃんも一緒に8人で帰ってこれる!」 裕也は顔を上げる。その瞳は少しうるんでいた。 「ありがとうっ・・・それで作戦は・・・龍にまかせるよっ」 「ここまできて他人まかせなのね。裕也君らしいわ」 岬さんは苦笑いで僕のほうを見た。 「どーせ作戦立ててもどこにいるかも王室の構造をわからないから・・・とりあえず二手に分かれて手あたり次第探す、ってことで」 「まったく、うちのトップ二人は呑気ねぇ?」 「トップって龍はトップだけど、僕はここにいる期間が長いだけで強くないよ?」 「でも二手に分かれても裕也しか顔わからないんじゃない??」 「大丈夫だろ、兄っていっても双子らしいからおんなじ顔してるはずだ。たぶん」 「たぶんって龍もテキトーだな」 空気が少し和やかになる。みんな緊張している。マスターに許可はもらったし、みんな強い。けど敵の本拠地に乗り込むのは初めて。マスターは正面から乗り込み敵の能力者をおびき出してくれるからこっちに能力者はあまり来ないはず。いかに見つからずに行けるかが勝負所だ。 「じゃ、みんな明日はよろしく!」 あと5時間。 5時間で王室に向かう。気分を休めようといつものように屋根の上に行こうと思い、やめた。一人でいると気分が落ち着かない気がした。 救護室の前につくと扉を開ける。 「やあ」 「やっぱりここにいるんだな、裕也」 救護室にいたのは裕也だった。 「っていうかノックぐらいしようよ。もういい年だよ?」 くすくすと笑いながら裕也はいう。 「いい年って・・・」 「マナーくらい守ろうねってことだよ」 「どうせ裕也しかいないから」
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