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あの事件以来2人で能力の特訓をしては救護室に入り浸っていた。マスターの指導は厳しかったから体の傷は後を絶えなかった。
救護室で特に何かを話していたわけではにけど裕也との思い出が一番あるのはここかもしれない。自分にとって苦楽を共にしたのは裕也だけだから。
「あのさ、もし帰ってこれなかったらさ・・・」
「そーいう話しに来たんじゃないんだけど。・・・大丈夫、裕也は僕が守る」
「・・・そうだね、暗くなっちゃだめだよね。でも、自分のことは自分で守るから龍も自分のこと大切にしてよ。なんか龍ってさ、自分のこと大切にしないでしょ」
「そう?」
「他人優先で人のためなら自分のことどうでもいいって感じ」
「・・・」
裕也に言われて何も返せなくなる。他人を優先しているつもりなんて全くない。でも自分のことはどうでもいい、それは当たっている気がした。
「僕、龍より龍のこと知ってるよ」
笑顔でそう断言する裕也がおかしくて少し口元が緩む。
「あ」
「ん?」
「龍の笑った顔、初めて見たかも」
「・・・気のせいだ」
いつからだろう。自分は笑ってはいけないって決めつけていた。人殺しは幸せになっちゃいけないんだって。
「龍はさ、もっと感情を表に出すべきだよ。悲しい時や辛いときは顔に出るのに嬉しいときや楽しいときは全くの無表情。もったいないよ。せっかく顔いいんだから」
「最後のは余計」
「いやいや、龍ってみんなから評判いーんだよ」
そんなくだらない話をして救護室で少し仮眠をとった。
そして時間になった。
「さぁ?いこーう!」
一番不安なくせに一番笑顔でいる。他人優先って人のこと言えないな。
「そういうのいいから、早く行きましょ」
岬さんが裕也を急かした。
「じゃ、ここからは二手に分かれる。僕と龍。メイちゃん、岬さん、要さん。光ちゃんとユリアさん。光ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫」
返事を聞くと裕也は少し笑った。
「じゃあ、行こうか」
ドォォォォォォン
「マスター、来たみたいだね」
「今のうちに少しでも多くの部屋を見ておく!」
2人で急ぎながらも慎重に。4人のことも心配だけどこればかりは何もできない。
「ねぇ」
「なんだこんなときに」
「こんなときだからこそだよ。約束しようよ」
「約束?」
裕也は足を止めてこちらを向く。
「龍が帰ってこれたらさ。自分を許してよ」
「?」
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