第1章

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あの時は使うわけないって顔して笑ってた。だけどこれは・・・僕の負った怪我をすべて自分が請け負ったんだろう。裕也の傷は助かるものだったのに。僕を助けたばかりに裕也は死んだ・・・ 「龍、さ、ん?」 後ろから声が聞こえた。メイだろう。 「え・・・裕、也さん・・・」 抱えている裕也に気付いたらしい。メイの方を振り向くことはできなかった。後ろから気配を感じる。みんなが集まってきているようだ。 「戻りましょう、か」 少し気配が消えた。おそらく瞬間移動で一人ずつ移動させているんだろう。そしてこの場に1人になった。一人になった瞬間に後ろから気配を感じる。あきらかに仲間ではない、そう思い振り返ろうとしたがおそかった。 あいつの足が自分の上半身に直撃して壁に叩きつけられた。一瞬息ができなくなる。 「生きてたのかって目だな・・・まじでこいつだけは許せねぇ!!!」 そう言って卓也は目の前に倒れているすでにこと切れている裕也に狂気の目を向ける。 「やめろっ!!!」 地面を蹴って卓也に殴りかかる。電撃を使うほどの力は残っていなかった。卓也にも能力を使うほどの力は残っていなかったようで能力は使わない。だが卓也の両手にはナイフ。それに気づきながらも対策を何一つ立てずに卓也の懐に飛び込んだ。これ以上裕也を気付つけたくなくてあんな安らかに、笑顔で眠っているのに・・・そのことだけが頭の中を占領する。卓也のナイフが腹部と肩に刺さる。 「うっ」 自分の顔が苦痛にゆがみ、卓也の顔は狂気にゆがむ。とめどなく血が流れルウ傷口を押さえながら数歩後退する。腹部に刺さったナイフを抜き卓也めがけて投擲する。心臓を狙ったナイフは腹部の痛みにより少し左にそれる。ナイフをはじこうと振った卓也の手は右目の機能が使えないせいか空を切る。ナイフは卓也の左胸に刺さった。卓也は左胸を押さえながらよろよろとおぼつかない足取りで後退する。そして壁にぶつかると崩れ落ち動かなくなった。死んではいないだろうが重傷だろう。それは自分も同じで裕也のもとに駆け寄ろうとしたがすでに体は動かず倒れこむ。意識はあるのに体は指一本動かなかった。 遠くから足音が聞こえる。それも一人や二人ではない。数10人だ。僕の周りに人が集まり始める。裕也と同じ場所で死ねるのなら本望だ。そう思い意識を自ら手放した。 暗闇の中に一人いた。いや、一人ではない。 「龍?」
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