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?龍 Side?
ーーーーー数年前ーーーーー
「龍。お前はこれからここで住むんだ」
マスターに連れられ初めて地下帝国に来た。幼いながら自分はもう普通の生活ができないことを理解していた。
ここにきて数日間はずっと部屋に閉じこもっていた。ここに来る前、王の部下の能力者に狙われた時力のコントロールができず全滅させてしまった。みんなが死んだ血の海で一人呆然とたたずんでいたところをマスターに拾われた。目の前に転がっていた肉の塊に恐怖はなかった。足元にたまる血にも恐怖はなかった。
怖かったのは自分の力だった。
地下帝国に来てからも何かするたびにまた誰かを殺してしまうんじゃないかとおびえていた。マスターはたまに部屋を訪れて僕の心配をしてくれた。この‘力‘についても話してくれた。マスターは能力の使い方も教えてくれようとしていたが僕は首を縦には振らずただただ虚空を見つめることしかできなかった。
時々部屋に訪れる大人の人たちはみなやさしかった。でも僕にとっては目障りで仕方なかった。同情するかのような目が耐えられなかった。
夜になり一人で帝家の中をうろうろとしていると明かりが漏れている部屋があった。扉の隙間から中をのぞくと中に人が二人いるのが見えた。
その部屋は他とは違い一面緑の景色に竹藪がたくさんあった。こんなところに生えるわけはないから人工だろう。中にいた二人は戦っているように見えた。二人とも見た顔だったので敵ではないことはわかるがなぜ戦っているのかはわからなかった。
「ん?」
一人が隙間から覗いている僕に気付いたのかこちらにちかづいてきた。
「あれ龍じゃねぇか、なにしてんだこんなところで」
話しかけられたが僕は無視をして扉の奥を凝視する。隙間から見るのとは違いとても広い。
「おーい、どうしたんだ?」
もう一人がこちらに来て僕を見るなり困ったような表情になった。邪魔なら邪魔と言えばいいのに・・・
「今日は終わりにするか。龍、部屋まで送ってやるよ」
そう言いながら男は僕の頭に手をのせる。
「「全く、龍ったら。ほら帰るよ」」
記憶がフラッシュバックする。
「ん、どーした」
頭にのせられている手を左手ではじいた。瞬間男はむっとした表情になったがすぐに笑顔に戻る。また何か言おうとしたが男が口を開く前に背を向けこの場を後にした。
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