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後ろから二人が去っていく気配がした。振り向くともう二人の姿はなかった。
それを確認すると僕は来た道を引き返しさっきの部屋に入った。入ってみるとどこが端なのかわからないほど広い部屋だった。二人はあんなに戦っていたのに竹藪には傷一つついいていなかった。ここなら自分の能力を使っても大丈夫かと思った。その日は一晩中この部屋にいたが能力をコントロールできずいつの間にか眠ってしまっていた。
目が覚めると目の前にマスターの姿があった。
「!?」
「こんなところで何をしている?」
マスターは僕の右手首をつかみひっぱろうとする。
「「いいから早くこっちにこい!!!」」
記憶がフラッシュバックする。
「あ・・・」
「?」
「や、やめろぉぉぉぉぉ!!!」
僕の叫びと同時に体中に電気が走る。僕の体から地面に電気が流れ部屋中に、竹藪一本一本にも電気が走った。
グィッと腕をひっぱられ気が付くと僕の体はマスターの腕の中だった。
「あ、「大丈夫だ」」
マスターが僕を抱きしめながら言った。その言葉に自然と僕の目から涙がこぼれていた。マスターが手に力を込める。
パシンッ
僕の体を走っていた電気が弾かれた。なにがあったのか全然わからなかったけど僕にとってはそんなことどうでもよかった。
「う、うぅ、わぁぁぁぁぁぁぁん!!」
僕はマスターの背に手を伸ばし力いっぱいに抱きしめた。
母親に捨てられたのが悲しかった。
男たちが頭に手をのせたのに母親を思い出して悲しかった。
いつまでも心が満たされない自分が悲しかった。
大人のやさしさが悲しかった。
なにより
自分の力が怖かった。
僕はマスターの腕の中で疲れ果てるまで泣き続けていた。
気が付くと僕は自分の部屋のベットに寝ていた。
「気が付いたか?」
横にはマスターがいた。僕の手をしっかりにぎって。
「よく眠れたようだな」
「は、はい・・・」
「内に抱えるな」
「え・・・?」
意味がよく分からずマスターを見ながら首をかしげる。するとマスターは僕の頭をグシャグシャとしながら
「うちにため込むより話したほうが楽だ。そういう相手を一人はみつけろ」
といった。マスターは僕の手を話部屋から立ち去ろうとした。
「まって!」
僕はとっさにマスターの腕をつかみ引き留めた。マスターは不思議そうにこちらを見つめる。
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