第1章

7/18
前へ
/18ページ
次へ
回りを警戒しながらひたすらマスターと二人で歩く。少人数のほうがいいだろうという結論で二人になった。なぜマスターが僕を指名したのかはわからなかった。マスターはもうすでに裕也の居場所はわかっているようだった。すると一軒の家の前に着いた。 「顔を隠しておけ。入るぞ」 マスターは僕の服のフードをかぶせながら言った。マスターの後ろについて行く。家の中に入ると僕は驚きを隠せなかった。その家は何か事件に巻き込まれたことが明白に分かるほど荒らされていた。棚や押し入れはすべて中の物が外に放り出されている。壁や家電製品もなにか固いもので何度の叩かれたような傷が残っていた。 「‘くるな!!!‘」 僕とマスターは同時に二階へ通じる階段を見た。階段を見たというよりは階段を上った先にいるであろう裕也を見たのかもしれない。僕とマスターは足音を立てないように階段を上りある部屋の扉の前で止まる。 「‘こっち来ないで!!‘」 裕也の悲痛な叫びが部屋の中に響いた。僕はとっさに部屋の中に入ろうとしたがマスターに腕をつかまれ止められた。どうして、と聞こうとマスターの方を見るがマスターは中の様子をうかがっているようで僕のほうを見ようとはしなかった。 「こいつ能力者のくせに弱いじゃねえか!」 「こいつの能力範囲は敵一人だけだ、早く連れていくぞ」 中から王室のやつらの声がした。マスターは僕の腕をひっぱり扉から距離を取った。その時はもう腕を引っ張られても王室のやつらを思い出して恐怖がよみがえることもなくなっていた。扉を開け中から王室のやつらが出てきたそこからは一瞬だった。気付いたらマスターの前には男たちが倒れていた。 「うわぁぁぁ!」 扉から飛び出してきた男が僕の横をすごいスピードでかけていった。マスターは瞬時に男を追いかけて階下に行く。 「裕也?」 恐る恐る扉から中をのぞいた。 「龍、君・・・」 倒れていた裕也が起き上がり僕のほうを見た。数か所殴られたような跡が裕也には残っていた。 「大丈「危ないっ!」」 裕也はいきなり僕の腕をひっぱり僕の上に覆いかぶさった。     パンッッッ! 聞き覚えのある音がした。頬に生暖かい液体が落ちた。 「裕、也?」 顔を上げると笑顔の裕也がいる。 「大丈夫、だよ」 そう言い苦痛に顔をゆがめ僕の体に裕也の全体重が覆いかぶさった。 「う、動くな!」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加