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先輩だったのかあの人。それもどうやら三年生みたいだ。
「おい、なんでセンター控えてるこの大事な時期に水族館にいるんだよ」
言い終わった矢先、梨子が驚いたような表情で俺を見る。
「アンタ知らないの?恭子さん英語の全国模試一位で推薦もアメリカの大学で決まってるんですけど」
「なんでお前が誇らしげに言うんだよ」
そんなすごい人だったのかあの人。
「それにね!私が図書館でテスト勉強してたら恭子さんが手伝ってくれたことがあるの!」
「ふーん。それで?……ってかなんでその人お前なんかに」
「理由は分からないけど、恭子さんに教わった教科だけ満点だったわ」
おかしい。梨子がこの前の化学の小テストで『Ar』の名称『アルゴニウム』って書いてたことを思い出していた。
頭を切り替えて瞬に訪ねる。
「瞬はなんで知ってんの?その、恭子って人」
「俺は部活で伸び悩んでた時期に指導してもらったんだよ。梨子と同じでどうしてかは分かんないんだけどね」
「ふむ。それで?」
「自己ベストで大会新だしちゃった!」
こちらにピースを添えて瞬は微笑む。
「頭良いだけじゃないのかよ……」
「でも、何事にも燃えて尽くす感じじゃなくてね、何て言うかその……全部を理解してるというか……?」
何が言いたいのだろう……まとめてほしいので少し睨む。
「と、とにかく!成功の秘訣を知ってるんだよ!」
予鈴が鳴った。
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