未だ蜘蛛の巣の中

2/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「まーだ部活行かないつもりなの?」 幼なじみで背の高い瞬(しゅん)は俺を覗きこむようにして微妙な表情で問う 「……行かない」 そんな短い会話を交わして俺と瞬は黙々と下校していた。 「……今日そっちはオフなの?部活」 なんとなく俺は聞いてみた。 「そうだよー。蓮と帰るの久しぶりだねー」 その表情は本当に嬉しそうだった。 瞬は陸上部で高跳びを専門にやってるらしい。その活躍は度々耳にしていた。 「蓮。もう入学してそろそろ一年経つんだけど、ホントに水泳やめる気なの?中学の時にした約束覚えてる?俺さ、蓮のバタフライまた見た……」 「うるさい」 そんな頑張ってる瞬に比べて俺は、飛ぶどころか前に進むことすらできないでいた。 約束の内容も忘れてしまっていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!