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黙ってしまった私を、琴美が急かす。
「うん…その伊藤先輩を追い払ってくれた男の子に、キスされちゃったの」
「…ぷっ」
私は小さな声で言った。
恥ずかしさを振り切って言ったのに、琴美が吹きだす。
わ、私、変な事言ったかな。
言ったとしても、変なのはあの男子生徒(ヒーロー)だ。
「琴美、酷いよ!吹きだすなんて!」
「あはは…ごめんごめん。でも、美紀おかしすぎ」
「へ?」
今度は私が首を傾げる番だった。
おかしいのは…私なの?
「だってさぁ、16歳にもなって、まだ初キスしてなかったのかぁ、って思ったらさ。何か……笑えて来ちゃったんだもん」
えぇ!?そこなの?
私は困惑した。
にしても、琴美の言い方は、まるで自分はしたことがあると思わせるそれで、私は琴美の顔を凝視する。
「琴美はあるの?キスの経験」
私が聞くと、琴美は「もちろんよ!」と言った。
そういえば、いつも一緒にいるのに…そんな話、一度もしてないな。
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