第1章

4/40
前へ
/49ページ
次へ
黙ってしまった私を、琴美が急かす。 「うん…その伊藤先輩を追い払ってくれた男の子に、キスされちゃったの」 「…ぷっ」 私は小さな声で言った。 恥ずかしさを振り切って言ったのに、琴美が吹きだす。 わ、私、変な事言ったかな。 言ったとしても、変なのはあの男子生徒(ヒーロー)だ。 「琴美、酷いよ!吹きだすなんて!」 「あはは…ごめんごめん。でも、美紀おかしすぎ」 「へ?」 今度は私が首を傾げる番だった。 おかしいのは…私なの? 「だってさぁ、16歳にもなって、まだ初キスしてなかったのかぁ、って思ったらさ。何か……笑えて来ちゃったんだもん」 えぇ!?そこなの? 私は困惑した。 にしても、琴美の言い方は、まるで自分はしたことがあると思わせるそれで、私は琴美の顔を凝視する。 「琴美はあるの?キスの経験」 私が聞くと、琴美は「もちろんよ!」と言った。 そういえば、いつも一緒にいるのに…そんな話、一度もしてないな。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加