序章

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キスをするのは初めてだから、キスがどんな感じかはわからない。 けど、さすがに鼻までを唇で覆われることはない筈…だよね? でも、今私は鼻まで覆われている気がする。 この先輩、唇が分厚いにも程があるんじゃないの? なんて思いながら、恐る恐る目を開けた。 「!」 伊藤先輩の顔は、離れたところにある。 私は、先輩とキスなんかしていなかった。 私の口と鼻を覆っているのは唇ではなく、誰かの手。 誰か――というか、初めて見かけた男子生徒だ。 「女、紹介しましょうか?」 私の口と鼻を手で覆っている男子生徒が言った。 「貴様、ふざけんな!」 伊藤先輩が、目尻を吊り上げて怒鳴る。 さっきまでの冷静な雰囲気は、原型を留めていなかった。
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