序章

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トン、と肩を押された。 背中がフェンスの押さえつけられる。 頭の中に、今女子高生の間で人気の“壁ドン”が浮かび上がった。 「きゃ…」 「こうなるぜ?」 目の前に、ヒーローの整った顔がある。 ドキドキが、だんだんスピードを上げていった。 「どいてよっ…」 私は、ヒーローさんの胸を押す。 …動かない。 華奢だから、簡単に動くと思ったのに、案外そうでもないらしい。 「まさか、これが本気じゃねェだろ?」 耳元で囁かれた。 耳たぶに吐息がかかって、思わず俯く。 私は、何も言い返せずに、ヒーローから手を離した。 手が後ろのフェンスにぶつかって、ガシャッと音をたてる。 「…オマエ、名前は?」 「……」
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