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淹れたての珈琲牛乳を木製の丸いテーブルに置く。いつもの通りテラス席に腰掛け早速一口飲む。
鼻を抜ける珈琲の香り。絞りたてなのだろう牛乳の強い甘味に舌鼓を。
「美味い!」
ニコニコと笑顔が咲く。マスターは客の、一口目を飲んだ後に出てくる表情が何とも好きだと聞いたことがあった。
ふと、周りを見てみれば自分が座るテラス席の逆側。見るからに貴族の格好をしている青年が珈琲を優雅に飲んでいた。
カップを持つ右手の人差し指には銀造りであろう指輪が、太陽光を反射させ存在感を放っている。
肩まであるだろう金髪をそよそよと吹く風に靡かせ、眼鏡をかけて一層醸し出す知的な顔。その姿は一枚の絵画のようだ。
「あまり見詰められると照れるな……」
少し見過ぎただろうか。綺麗な声で話し掛けられてしまった。
「申し訳ございません。余りに綺麗な絵画のようでしたので見入ってしまいました」
椅子から立ち上がりお辞儀をしながら謝罪の言葉を。
「そんなに畏まらないでくれ。それよりも御一緒して良いかな?」
「ありがとうございます。勿論です、一緒に飲みましょう」
ホッと見つからないように溜め息を吐く。貴族は苦手であった。自分自身で大したことをしていない貴族は。親の七光りによって横柄な態度で平民を見下し、権力によって様々なことを可能にさせる。
更に先程のようなある程度の礼儀で謝罪しないと難癖を付けられるのだ。
此方に歩いてくる青年は、そんな苦手な“貴族様”ではないようだ。
「僕はネクロ・バナッシュ・ロウディア。宜しくね、『ルーク・シュトレウス』君」
対面に座り、涼しげな表情でネクロは言った。
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