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「……なんで俺の名前を知っている? 記憶に違いがなければ初対面ですよね?」
「ああ、そういうことか。勿論僕達は今日が初対面だね」
敬語が崩れるのも構わず再度立ち上がり、怪訝を表に出した眼差しでネクロを射抜く。
また、彼も気にしてはいないのだろう、変わらず涼しい顔で脚を組む。
カチャリとカップをソーサーに置き、立ち上がったルークを一瞥した。
「不思議そうな顔だね。答えは簡単さ、僕『達』は普通よりも“そういうモノに”敏感なんだ。気配って言うのかな、感じるんだよ」
表情は微笑んだままだ。対照的に、ルークはネクロを相変わらず怪訝な眼差しで見詰める。
ネクロはそれを見て、少々口角を吊り上げた。スーツの内ポケットから手のひらを少しはみ出す程度の手帳を取りだし――
「ルーク・シュトレウス。年齢は十七歳。フーラリア学術院に通う第二学年であり成績は優秀。運動神経も頭一つ抜けている。両親は五年前、既に他界しており、二歳上の姉は行方不明。現在は伯父であるバルテス・クロウウェルと二人暮らし。バルテスさんは首都にて重役の為、余り帰宅はしていない、こんなもんかな?」
少し調べればわかるさ、と。嫌悪感すら抱くような狂った笑みで。
――刹那。
ネクロの蒼眼がルークを睨む。辺りの空気がピリピリと肌に刺激を与えるような、そんな視線だ。
「うん、やっぱり合格だよ。僕の殺気を直に喰らっても顔色一つ変えないしね。君は僕が思った通り『相当な使い手』だ」
言った後であった。
『先程の殺気よりも巨大。且つ尋常でない圧力がネクロにのし掛かる』のは。
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