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少年は普段、同年代の子供たちよりも頭一つ分大人びていた。冷静に周りを見て、空気を合わせる。大人から見ても冷静であった。
結果、同年代の子供らからしてみれば、彼は皆から慕われるお兄ちゃんだった。
悪戯した子を叱るのも彼。その後慰めるのも彼の役目。大人には言えない子供ならではの悩みを相談するのも彼だ。
しかし今宵見た、見てしまった紫光の球体――
それは、そんな彼を子供に戻すのに充分な威力を纏っていたのだ。
「せっかくお父さんとお母さん、それとお姉ちゃんにバレなかったのになあ」
はあ、と溜め息。しかし夜も遅い為彼は立ち上がり、クルッと踵を返し来た道を戻り始める。
ふと。
「こんな夜中に危ないよ?」
彼の後ろ。正確には湖に立つ大きな岩の上から。
「だっ、誰!?」
頭の中は驚愕に満ちていた。恐怖が心を締め付けるが、意を決して振り返り、声が聞こえた岩の上を見ると。
「ん、私はセレナ。初めまして!」
ペコリとお辞儀をする、月明かりに映えた女性が居た。
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