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「こんな時間にどうしたの?」
岩の上に立つセレナの綺麗な声が聞く。月明かりの逆光にて鮮明には見えないが、雰囲気からして心配してそうな表情で。
「光が見えたんだ。紫色の綺麗な玉だったんだよ? それを追い掛けてたら此処に来ちゃったんだ、ごめんなさい」
少年はきちんと此処に訪れた理由を。正直な反省を込めた謝罪を返す。
セレナは一瞬、ピクンと肩が跳ねた。そして心配そうな表情は変わり、次いでは泣きそうな表情へ。
「ねえ。少しだけお話しない?」
今度は笑顔で。おいでおいでと岩から少年に手招きをする。
「うん!」
勿論少年はそれに笑顔で返し、少しだけ駆け足で岩に向かった。
普段から子供たちの遊び場になっている湖の岩を登るのは慣れている。
ひょいひょいと登り、気付けばセレナは湖の方へ身体を向けて、ダラッと岩に腰掛けていた。
笑顔で少年を見るその容姿は、子供である少年ですらはっきりと。物凄く整った、整いすぎている綺麗な顔であった。
頬を赤く染め、少しだけ顔を逸らしながら、少しだけ距離を空けながら座る。
「セレナさんはなんで此処に?」
照れ隠しのように、そして自分が居たときに彼女の姿は無かったはずだということを思い出し、問う。
「うーん……。二人だけの秘密にしてくれるなら話そうかなあ」
ニコリと、それでいて無邪気に返すセレナ。一瞬だけ目が合うも、彼女はふと少年の身体中にある細かい傷へと視線を合わせる。
不思議そうに首を傾げ、それでも普段遊び慣れている雰囲気とはまた違う岩場に少し興奮しながら、わかったと頷く。
しかし。
(なんで泣きそうな顔してるんだろう)
ふと垣間見る彼女の表情に疑問を抱いていた――
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