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それは普段よりも、月や星が一段と輝いて見える夜だった――
セレナと不思議な出会いを果たし、早数ヶ月。いつも通り夜に二人は湖にある岩へと腰掛け、少しの間会話をする。それは何時も通りの他愛ない世間話。
いつもと変わらないはずなのに。
少年は少しずつ見慣れてきたセレナの表情に、正確には自分を見つめる翡翠の双眸に、違和感を抱いていた。
「やっぱり、バレちゃいます?」
「うん。セレナは隠し事が下手くそだもん」
恥ずかしそうに告げるセレナに、少年は笑いながら返す。
数分。或いは数十分だろうか。短い間だが、沈黙が続く。
静かな空間に風が出てきた。
驚かないでね、と何時ものような無邪気でふにゃふにゃした笑顔ではなく前置きを言って。
「あのね、私は――」
意を決したのだろう。バッとセレナは自身の右側に腰掛け、こちらを見ている少年へ、
「魔女、なんだ……」
そう告げた。悲しいのだろうか。何処か苦しいのだろうか。徐に両手でクリーム色のワンピースをギュッと握る。
またもや沈黙。少年はセレナのうるうると涙を溜めている綺麗な瞳をしっかりと見つめて。
「うん、知ってるよ?」
わざと笑みを深くして返答した。
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