9人が本棚に入れています
本棚に追加
――懐かしい夢を少し見た気がした。
しかし夢は起きた瞬間、何故か形を崩してしまう不思議なモノ。
「――なんか夢見たよなあ」
ベッドからむくりと起き上がり、ウルフカットの黒髪……今は寝癖で爆発しているが。ボリボリと後頭部を掻く。
遮光性能皆無のカーテンからこれでもかと降り注ぐ眩い光を疎ましげな瞳で睨み、続いて枕元の目覚まし時計を見た。
「なんてこったい!」
時刻を刻むは十時三十三分。自らが通うフーラリア学術院の一講時目は九時二十分からだった。自分が住む家は、学術院へ徒歩で二十分と言った距離である。
「フーラリアの韋駄天こと俺でも間に合わねぇなこれ」
はあ、と嘆息。サボることを決意した眼差しで。
「まずはメシだな」
開き直り、腹に潜む地鳴りのような鳴き声を抑えることにした。
最初のコメントを投稿しよう!