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ザッザッザッ。
歩く度に地面が音を立てる。
「はぁ、はぁ…。」
歩き続けてどのくらいになるだろうか。
辺りはもうすっかり暗い。
目的地は一体どこにあるのか。
一心不乱でただひたすら歩き続ける。
「やっぱり噂なのかな…。」
少年は足を止め、大きな木にもたれ掛かった。
町でちらっと聞いたある噂を思い出しながら少年は鬱蒼と繁る草木に体を埋めた。
ここは“迷宮の森”。
一度踏み込むと、脱出するのは困難な深く広い森。
少年は草木に包まれながら、つぅっと一筋の涙を流す。
「ごめんね、父さん、母さん…。父さんと母さんをあんな目に遭わせた奴ら…、捕まえられそうにないや…。」
寒さと飢えで少年の体は動かなくなっていく。
遠退く意識。
薄れる希望。
少年は静かに目を閉じた。
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