1.望め。

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───────────── 「なんだ?殺しか?」 小さな町の一角で人がたむろしている。 ちょうど、通りを歩いてた少年は、騒ぎに気付くと、何事かと人の群れに寄っていった。 「トランプだぞ。制裁か…。」 人をかき分けかき分け、少年は進んでいった。 やっと開けた場所に着くと、足元には、一体の男性の死体が横たわっていた。 「わ…。」 死体は胸部を刃物で一突きにされており、服のその辺りは赤黒く染まっている。 「最近増えてないか?」 「そう言われてみれば…。」 少年の背後で微かに震えた声が聞こえる。 「まさか自分も制裁が下ったりしないよな…。」 「人の恨みを買うようなことでもしたのかい?」 「見に覚えはないんだが…。」 制裁…。 少年はその言葉に首をかしげた。 「あの…、制裁ってなんですか?」 少年は振り返ると会話の主に訪ねた。 「お前さん、知らないのかい?」 会話をしていた片方の男性がすっとんきょうな声を上げて少年を見つめた。 「ほれ、死体の胸の上にトランプカードが乗っているだろう?」 もう一人の男が死体を指差して言った。 確かに死体の胸元には赤黒い血で染まったハートの2のカードが置かれている。 「カーデッド・ファミリーとかいうのが人々の声に応えてこうやって制裁を下すんだと。」 男は死体をまじまじと見つめながら低い声で話した。 「彼らは何者なんですか?」 少年はトランプカードを覗き込み、男達に尋ねた。 「簡単に言うと、殺し屋…だなあ。」 「あの迷宮の森のどっかにいるって話だ。」 町の外れの方に鬱蒼と広がる迷宮の森。 黒い木々が時折ごおっと呻き声を上げる。 「まぁ、探しに行って帰って来れる奴は相当の運の持ち主だろうなあ。」 そう言うと男はけたけたと笑った。 カーデッド・ファミリー…。 少年はその殺し屋の名をしっかりと心の中に刻み込んだ。 ────────────────
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