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『この「市民英雄法」といいますのは…』
この後もえー、あー、うーを挟んだ無駄に時間のかかる話し方で画面の防衛大臣(と思われる人物)は説明を続けた。
おかげで、殆ど内容が頭に残らなかった。
いや、防衛大臣(仮)のせいではなくただ単に僕の頭が悪いだけなのかもしれないが。
いや、かもしれないではなく、実際に、僕の頭が悪いだけなのだろう。
僕の頭が悪い。
僕が、悪い。
ただ、それだけなのだろう。
「何言ってんのかわかんねぇ親父だな、このディープインパクトハゲ」
一緒にニュースを見ていた父が画面を見たまま言う。
「…さすがにディープインパクトと呼ばれるほどには不毛の地とはなっていない気がするけど」
全く守ってあげる義理はないが、流石にその言われようは可愛そうだったので僕は父に反論した。
「はん、あめぇな息子よ。あいつのあれは実はまだちょっと生えてますと見せ掛けているだけのズラだ」
「往生際が悪すぎる…」
「あいつは昔からそういうところがあったからなぁ」
「父さんに議員の知り合いが居るなんて聞いたこと無いけど?」
「ああ、聞いたこと無いだろうな。言ったこともないし居たこともないし」
「息子との会話が適当過ぎる」
「まともな話ばっかしてる家族なんか息がつまるばっかだろ」
「適当な話ばっかりしてる家族の距離がつまるとは限らないよ」
「そりゃもちろんそうだ。だがな、適当ってのは大事だぜ、息子」
父がこちらを向きながらニヤリと言う。
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