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「今日も雨だったな」と、彼が言う。
そう、彼とのデートの日は一度も晴れたことが無い。
「嫌だったら、自分の力で晴れさせて見せたら? 自称晴れ男さん?」
私はムッとして、軽く彼を睨んでみる。
「お前の雨女度が高過ぎて、勝てないんだよ」
そう言ってニヤッと笑う。
何よ、雨女度って……。
私はふてくされながら、1人歩き出す。
「待てって。ちょっと茶店入ろーぜ。映画始まるのにまだ時間あるだろ?」
確かに、後40分くらいある。
私達は、近くの喫茶店に入ることにした。
彼はコーヒー、私はハーブティーを注文する。
いつもの定番。
「なあ、ハーブティーってウマイのか? 俺にはさっぱりわかんねーけど」
わからなくって結構よ!
私はさっきの事もあり、彼の言うことに無視をした。
「お待たせしました」
ウェイトレスの女の子が、注文の品を運んでくる。
私がカップを取ろうとすると、彼が腕を伸ばして横取りしてくる。
「ちょ、ちょっと!」
私の非難の声にも耳をかさず、カップを口許に持っていき、一口、ゴクリと飲んだ。
「へぇ~、ウマイじゃん」
えっ? 何?
思わず、キョトンとしてしまう。
今まで一度も飲んだこと無いのに……。
彼は私のカップを戻すと、自分のコーヒーを飲み始める。
ミルクも砂糖も入れない、ブラック。
甘党の私には到底理解できないが、苦くないのだろうか……。
「飲んでみる?」
私の視線に気付いたのか、彼がカップを差し出す。
「いいよ。苦いの苦手だもん」
私がそう言うと、
「だよな。お前お子ちゃまだし」
と言って、またニヤニヤ笑いを始める。
ムカー!! 何なのよ! 嫌みばっかり言って!
頭にきた私は、椅子から立ち上がり、店の出口に向かおうとした。
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