『雨女、晴れ男』

2/3
前へ
/3ページ
次へ
「今日も雨だったな」と、彼が言う。 そう、彼とのデートの日は一度も晴れたことが無い。 「嫌だったら、自分の力で晴れさせて見せたら? 自称晴れ男さん?」 私はムッとして、軽く彼を睨んでみる。 「お前の雨女度が高過ぎて、勝てないんだよ」 そう言ってニヤッと笑う。 何よ、雨女度って……。 私はふてくされながら、1人歩き出す。 「待てって。ちょっと茶店入ろーぜ。映画始まるのにまだ時間あるだろ?」 確かに、後40分くらいある。 私達は、近くの喫茶店に入ることにした。 彼はコーヒー、私はハーブティーを注文する。 いつもの定番。 「なあ、ハーブティーってウマイのか? 俺にはさっぱりわかんねーけど」 わからなくって結構よ! 私はさっきの事もあり、彼の言うことに無視をした。 「お待たせしました」 ウェイトレスの女の子が、注文の品を運んでくる。 私がカップを取ろうとすると、彼が腕を伸ばして横取りしてくる。 「ちょ、ちょっと!」 私の非難の声にも耳をかさず、カップを口許に持っていき、一口、ゴクリと飲んだ。 「へぇ~、ウマイじゃん」 えっ? 何? 思わず、キョトンとしてしまう。 今まで一度も飲んだこと無いのに……。 彼は私のカップを戻すと、自分のコーヒーを飲み始める。 ミルクも砂糖も入れない、ブラック。 甘党の私には到底理解できないが、苦くないのだろうか……。 「飲んでみる?」 私の視線に気付いたのか、彼がカップを差し出す。 「いいよ。苦いの苦手だもん」 私がそう言うと、 「だよな。お前お子ちゃまだし」 と言って、またニヤニヤ笑いを始める。 ムカー!! 何なのよ! 嫌みばっかり言って! 頭にきた私は、椅子から立ち上がり、店の出口に向かおうとした。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加