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すると、
「今日さ、プレゼントがあるんだ」
えっ? プレゼント?
思わず振り返る。
彼はごそごそとジャケットのポケットに手を入れると、中から赤いリボンの付いた小さな箱を取り出した。
「な、何?」
私、声上擦ってる!
あまりの事に動揺しながら、彼の手から箱を受け取った。
じっと箱を見つめる。
プレゼントなんて、初めてじゃなかった?
「とりあえず座れって」
彼に言われてハッとなり、店内を見渡す。
何人かの人が、こちらを見てクスクス笑っている。
は、恥ずかしい~。
椅子に座って落ち着きを取り戻す。
「開けていい?」
「おう」
彼の返事を聞いてから、小さな箱を開けてみる。
「ブローチ?」
そう、中には虹のモチーフのブローチが入っていた。
「可愛い」
「だろ? お前、そういうの好きかと思ってさ」
彼が嬉しそうに言う。
「ありがとう。付けてみていい?」
「ああ」
嬉しくて、早速ブラウスの胸元に付けてみる。
「どう?」
「うん。良いんじゃない?」
彼が照れくさそうに笑った。
それを見て、私も笑顔になる。
そろそろ時間なので店を出ることにした。と、
「雨、止んでる」
さっきまで降っていた雨が止んでいた。
「あ、あそこ。虹が出てる」
彼が空に指をさして言う。
「えっ? どこ?」
私は彼が指差した先を見てみる。
そこにはくっきりと、大きな虹がかかっていた。
「きれい」
私は思わずつぶやく。
「俺の晴れ男ぶり、見たか?」
彼が得意気に言う。
「見た見た」
私もそれに合わせて答える。
「雨女と晴れ男。二人揃わないと、これは見れないからな」
「そうだね」
「俺たちさ、相性良いかもな」
そう言う彼の横顔は、本当に嬉しそうだった。
「そうだね」
私はそう言って、彼の手を握る。
私達は映画館に向かって歩き出す。
その私の胸には、消して消えることの無い、虹のブローチが光っていた。
――おわり――
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