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「アーシャ…良かった。アーシャ…」
嬉しそうに、しかし気安く自分を後ろから抱き締めてくるルークなどお構い無しに、アーシャは茫然と、森の先にある湖城を見つめていた。
「ルーク…なぜ…?」
「見回りだよ。新月の夜は吸血鬼が現れる。だから誰も寝てはならない。さっき、イワンの奥さんのトリーシャさんが襲われてね?一緒にいた子供を探していたんだ。」
「子供…」
そう言えばと思い振り返ると、カイルが連れてきた赤ん坊を大事に抱える果物屋のイワンと、手にはランタン。胸にロザリオを掛けた街の男達が集まっていました。
「アーシャ。君は何て勇敢な女性なんだ。あの吸血鬼から赤ん坊を取り戻すなんて。」
「えっ?!ちが…」
「みんなっ!アーシャが身を呈してその子を守ったんだっ!もう、彼女を余所者と避けるのは止めないか?!彼女も僕達と同じ、吸血鬼を憎む人間なんだ!そうだろう?!」
その言葉に、集まっていた男達の誰もが正論と分かっていても、素直に首を縦に振ることはできません。
根強い単一民族の考えが、男達の首を縦に振らせない事に業を煮やしたか、ルークがアーシャにとって信じられない言葉を放ったのです。
「なら、アーシャを僕の花嫁にする。これなら、彼女はサハリン人の妻だっ!髪が気になるなら、染めれば済むことだろう?なあ、アーシャ…」
「でも、私は神に…」
「なら君は、勇敢な行動を取った英雄なのに、ずっと皆に後ろ指を指されて、これからも生きていくのかい?」
「だからそれは…」
「僕は君を愛しているんだっ!君がずっと、こんな小さな修道院で独り孤独に老いていくなんて耐えられない。だから、僕と幸せになろう?アーシャ…」
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