4人が本棚に入れています
本棚に追加
―――今夜の空は、あの日見た青に酷く似ている。
結婚式を明日に控えた新月の夜。
自分の家の周りを取り囲む男達が持っている松明に照らされながらも、澄んだ夜空は深い青色に染まっていました。
星がキラリと1つ、箒に乗って落ちていくので、アーシャは胸の前で手を組み、祈りを捧げた。
―――どうかカイルが私を連れ去りに来てくれますように。
金に染められた髪。
ルークの趣味で着せられた服。
あの時と姿形は違うけど、どうかどうか、見つけ出して。
私をここから拐って、貴方の側に…
貴方の一部にさせて。
窓から吹き込む風は僅かに暖かく、春が近い事をアーシャは知る。
―――愛している。
カイルの言葉が、アーシャの心に爪を立てる。
「カイル…お願い…早く私を…」
その瞬間でした。
白いレースのカーテンが激しく棚引き、漆黒の影が窓からやって来たのは。
「カイルッ!」
確かめるまでもなかった。
ルークが新居に選んだ屋敷は、3階造り。
そこの窓から誰にも気付かれずに入ってこれる人間など居はしない。
居るとしたら人外…人ではないもの。
アーシャの呼んだ通り、影の主は青い髪に青い瞳。鋭い牙の歯を持つ吸血一族「リンドの民」の最後の1人…カイル・リンドでした。
最初のコメントを投稿しよう!