fall in ……

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「戸波さん」 私を呼ぶ声ではっとした。 肺まで入った空気でようやく酸素がからだに回る。 真っ直ぐに私を見つめる視線から逃れるように顔を伏せた。 「……戸波さん?」 私は小さく首を振った。 「無理……です」 「どうしても?」 「……」 「俺の事きらい?」 小さく首を振る。 「理由聞いてもいい?」 落ち着いた優しい声だ。 「……私瀬名さんに酷いこと言った」 「『地獄に落ちればいい』?」 「……」 「そんなん言われて当然の事してたんだもん」 「でも、私は部外者だし 言える資格なんてなかったのに」 「真面目だね、戸波さん」 「……」 「じゃあさ」 彼の指が視界に入った。 俯いた私の髪を耳にかける。 顔を上げて彼を見た。 「俺のして来た悪事と戸波さんのその罪悪感を相殺しよう」 「……え?」 「俺のマイナスと戸波さんのマイナスを足してプラスにしよ」 「…… 意味、が」 「うん、俺は過去の事棚上げてるからね」 からからと明るく笑った。 「それでちゃらにならない?」 「……う…」 答えに困る。 「理由なんてなんでもいいよ 俺から離れる理由がなくなるなら」
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