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急に引っ張られていた手が離され、膝から地面に倒れこむ。
顔をあげると私の手を掴んだ男の人は宙を舞っていた。
投げた。
ドサッ
鈍い音と共に呻き声。
男を投げた人はうつ伏せの男に間髪入れず馬乗りになり、腕を締め上げた。
「サイフ出して、免許証」
低い声で指示を出す。
「悪いけど、警察に届けるから。
そしたらこの人に接近禁止令とか出ると思うので、ちゃんと守ってよね」
通りかかった人に協力してもらって取り押さえている。
「翠ちゃん、大丈夫?」
男を投げたのは
「たいが、くん」
コンビニの彼だった。
座り込んだままの私に駆け寄り手を差し出した。
「……」
「わ、膝擦りむいてるじゃん」
私を引き上げてちらばっている買い物の品や手紙を広い集めて手を握る。
「ごめんね、恐い思いさせて」
何故か彼が謝る。
アパートの二階まで一緒に上がった。
「翠ちゃんいつもコンビニ寄って帰るじゃん。
行動パターンが一緒だから狙われやすいんだよ。
この辺で家に入る時に襲われる事件があって……」
「……」
「もしかしたら目つけられてるかもって思ったんだ」
「そうなの?」
彼は眉を下げて頷いた。
「ごめんね、もっと早く言えば良かったのに翠ちゃんと会えなくなるのが嫌だなんて自分のエゴのせいで怖い思いさせた」
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