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初恋をこじらせた。
一途こそが美しいって
それが正しいって
想いを貫く事が
まるで宝石みたいに輝かしく思えていた。
相手が同じでは無いと気付いた時
私の柔らかかった心は固くなり
透明だった色は多分濁った。
「失恋したらお墓をつくればいいのに」
「……ミドリちゃん何いってんの?」
妹が心底呆れた声で言う。
「あ、いやね。チコをちゃんと供養したでしょ?
悲しかったけど区切りがついた、みたいな。
だから失恋したらそういうのした方が残らないよねと思って」
13年飼っていた犬が亡くなったのは一月前。
母が酷く悲しんで、元気が無くなったので実家に戻った。
今はだいぶ落ち着いてきたみたいで、そろそろ自分の家に戻ろうと思っている。
「翠、仕事もっと早く帰ってこれないの?
女の子が夜遅くなんて心配だわ」
「……うーん、今は忙しいから」
なんて言うのは嘘。
今月は早く帰れている方だし、実家に帰るから何時もより早く帰っている。
こういう事になるから1人暮らしをしだしたんだ。
お母さん。毎日6時に帰ってこられる仕事なんて限られているんだよ、と言いたい。
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