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「……来ない、かと
思っ……た」
呼吸の間に言葉を漏らす。
「ごめんね」
「遊びの対象に……されてるのかもって、思ったら……怖くなった」
「……本当にごめん」
「…‥ぅ」
呼吸が乱れて鼻水も出てきた。
「戸波さん……嫌なら突き飛ばしてね」
彼の声が耳元で響いた。
それからゆっくりと背中に回された手に力が入る。
「……」
どういう状態か分かっていたけど私はされるがまま腕の中に収まった。
背中を撫でる手が優しくリズムを取る。
「……大丈夫になった?」
暫くして私の呼吸が落ち着いた頃、彼が聞く。
「……はい、すみません」
一歩離れると、瀬名さんも腕を解いた。
ハンカチを押し当てられ涙を拭かれた。
私はそれもされるがまま受け入れた。
「戸波さん、俺の事好きでしょ?」
「……」
瀬名さんが私の目線に合わせて屈んでいた。
視線がぶつかったまま私は固まった。
「認めてよ……お願いだから」
切なそうな顔で私を見つめるから
呼吸をしていても空気が入って来なかった。
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